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いきがい・助け合いサミットin大阪 第3部パネル 分科会51 「海外では地域の助け合い活動でどれだけ高齢者の生活を支えているか」

日本の看取り、世界の看取り-『理想の看取りと死に関する国際比較調査研究』から見えてきたこと-2019年9月9日(月)・10日(火)の2日間、大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)において、さわやか福祉財団主催の「いきがい・助け合いサミットin 大阪」が開催されました。

国際長寿センターは10日(火)12:30~14:30に第3部パネル分科会51「海外では地域の助け合い活動でどれだけ高齢者の生活を支えているか」を主催しました。

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【プログラム】(敬称略)

<司会進行:大上真一(国際長寿センター室長)>
■第1部 講演
12:30-12:50 講演① 
「『自立』と『参加型ネットワーク社会』『地域づくり』に向かうヨーロッパ等諸国」
松岡洋子(東京家政大学人文学部准教授)
12:50-13:20 講演② 
「誰もが自分にとって最高の社会的役割を持つ社会へ        ―イギリス『リエイブルメント』を中心に―」
鎌田大啓(大阪大学医学系研究科保健学専攻 招聘教員/株式会社TRAPE代表取締役)
13:20-13:35 講演③ 
「韓国の100歳長寿者の地域の中の暮らしについて」
李 誠國(韓国慶北大学教授)
13:35-13:50 講演④ 
「中国・上海市における支え合い・助け合いについて」
馬 利中(上海大学東アジア研究センター所長)
■第2部 パネルディスカッション
13:50-14:30 パネリスト:全講演者
コーディネーター:大上真一

左から、馬先生、李先生、大上氏、鎌田先生、松岡先生

分科会51では4つの講演とそれに基づいたディスカッションが行われました。

最初に登壇した松岡洋子氏は先進諸国で広く展開されているパラダイムシフトの内容を報告しました。すなわち、高齢者の自立意識の向上とともに高齢者支援は「制度のみで支える」という考え方から「高齢者の自立と地域参加を支援する」へのシフトです。2013年に国王が福祉国家から自分の生活と周りの環境に責任を持つネットワーク型社会への転換が表明されています。

デンマークでは2015年より、地域ボランティア組織への支援、拠点整備が集中的に行われるとともに、支援が必要になった場合にはまずリハビリテーションを集中的に行うことによって在宅生活を続けることが原則となっています。

オーストラリアにおいても2015年のケア法で高齢者支援にあたっては「してあげるサービス」ではなく、個人の強みと能力に焦点を当てることが徹底されています。

これらの動きを背景に、先進各国ではさらに高齢者の自立を促し、ボランティア組織などの地域資源づくりが以前より増して活発になっています。

次に鎌田大啓氏はイギリスで近年広がっている「リエイブルメント(ふたたびできるようになる)・サービス」の紹介を行いました。基本理念は、「地域の中でみな役割を持ってよりよく生きる」ということです。そのために自治体のリエイブルメントチームは孤立などによって虚弱化した高齢者に短期集中リハビリテーションを行い、さらにコミュニティの多彩な活動につないでいくのです。

韓国の李誠國氏は、100歳高齢者の調査を通じて健康長寿の秘訣は「毎日何らかの仕事をしている」「正しい生活習慣の自己管理」「人との関係においてポジティブ」であることを見出しました。また韓国においてもケアが必要な住民が住んでいたところで一人一人のニーズに合ったサービスを享受し、地域社会との交流の中で生きていくための「地域主導型社会サービス政策」が開始されようとしていることを報告しました。

そして中国の馬利中氏は2014年の日中韓賢人会議での共通理解である「アジアは老いている。高齢化が加速するにつれて、東アジアの人口ボーナスは続々と消えており、これは経済成長に直接マイナスな影響を引き起こす。アジアで主導的役割を果たす日中韓はさらに協力を強化するべきだ」との認識を紹介しました。さらに上海市を例に、前期高齢者が80歳以上高齢者を支援(安否、家事、通院等)する仕組みや生涯学習などを紹介しました。

以上から、本分科会においては、世界的に高齢者の地域参加に向かうパラダイムシフトが大きく進んでいることが確認されました。そして日本において進んでいる「助け合いを通じて地域を作っていくこと」の重要性は世界各国の共通課題であり最優先事項であることが確認されました。

  

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