国際交流

G20保健大臣会合サイドイベント 「高齢社会における予防」 を国際長寿センター(英国)が開催 2019年10月18日(金)(岡山)

2019年6月に開催されたG20大阪サミットに引き続き、10月19日にG20保健大臣会合が岡山市で開催されました。この会合のサイドイベントとして10月18日、国際長寿センター(英国)が主催したイベント「高齢社会における予防」が各国政府要人、世界各国の国際長寿センター参加のもとで開催されました。

席上、厚生労働省の鈴木康裕医務技監は健康寿命の延伸、ヘルスサービスの生産性向上、地域包括ケアなどの日本の努力を紹介し、また、国際長寿センター(日本)の高井康行代表は以下の発言を行いました。

「私たち国際長寿センター(日本)はここにご出席の日本の厚生労働省とともに、また国際長寿センター(英国)、国際長寿センター(豪国)の同僚とともに高齢者のプロダクティブな生活を進める国内唯一の国際団体として1990年以来活動してまいりました。

 この間、活動的な高齢者として高齢者が主人公となって地域資源を建設していくために、そしてさらには終末期に至っても自らの意思を自ら決定するという主体的な立場を貫くために、さまざまな調査研究を行い同時に普及啓発活動も行ってまいりました。

 とりわけ近年は、みなさまよくご存じのように、社会的なコネクションが予防にもたらす大きな効果に着目し、我が国の地域包括ケアシステムの中で高齢者が地域ネットワークを作っていくためのさまざまな方法を提案しています。これはG20大阪首脳宣言の中にある「我々は、(…)分野横断的かつコミュニティに根ざした生涯を通じた統合された医療及び介護を通じて、健康で活力ある高齢化を促進する」という考え方に沿っているものです。

ここで改めて医療、介護制度の役割とともに、社会参加がもたらす健康へのポジティブな効果について再確認をし、今後さらにケアシステムの中で自立支援をすすめ、高齢者自身が社会参加を行っていくことの重要性を訴えたいと思います。

 もとよりこの課題は日本特有のものではなく、世界各国共通のテーマです。G20大阪首脳宣言でも「我々は、国際機関及び全ての関係者に対し、効果的に協力するよう奨励し、全ての人々のための健康的な生活及びウェルビーイングのための世界行動計画の今後の発表を期待する」と述べられている通りです。今後とも協働して努力を続けて参りましょう。」

その他の参加者の発言は以下のように国際長寿センター(英国)のHPで紹介されています。
https://ilcuk.org.uk/now-is-not-the-time-for-inaction-g20-health-ministers/

「今こそ行動を起こす時」-G20の保健大臣たちが主張

日本でのILCサイドイベント後、予防の重要性を推進するよう保健大臣たちが約束

岡山のG20保健大臣会議に先立ち、国際長寿センター(英国)が10月18日に開催したイベントでは、G20の保健大臣および世界的な思想リーダーたちが、生涯にわたる疾病予防へ優先的に取り組むよう協力することに合意しました。

国際長寿センター(英国)のイベント後、G20の保健大臣たちはG20岡山保健大臣宣言で、「感染性疾患及び非感染性疾患の予防、制御及び管理を促進すること、並びに、生涯にわたり、健康的な生活習慣及びヘルスリテラシーに関する意識の向上と労働者の安全と健康の推進を含む政策を実施することにより、健康増進に取り組むこと」を約束しました。

<講演者>
・鈴木康裕氏(日本):厚生労働省医務技監
・エリック D. ハーガン氏(米国):保健福祉副長官
・ガン・キム・ヨン氏(シンガポール):保健大臣
・ジュリー・バイルズ氏(豪国)
  :国際長寿センター(豪国)理事長、ニューカッスル大学教授
・デヴィッド・シンクレア氏(英国):国際長寿センター(英国)事務局長


特に人口高齢化という背景の中で、疾病を予防したり、長期的な機能障害や複数疾患の複合的な影響を抑えたりすることはともに、健康にとって極めて重要であり、また保健システムの経済的持続可能性を支える上で重要な役割を担うという点で、討論者たちの意見が一致しました。

国際長寿センター(英国)の分析によると、2017年だけをみても全世界の障害生存年数は2,710万年となっており、その主な原因は予防可能な疾病です。保健システムの最優先事項として予防に取り組むよう、世界中の政府が早急に行動を起こさなければ、この数字は今後25年間で17%上昇すると見込まれています。

各講演者の発表要旨は以下の通り。

■エリック D. ハーガン氏(米国保健福祉副長官)

高齢化社会では、予防の重要性が大幅に高まりました。高齢者の間で問題が悪化する前に、そこへ対応できるようにしなければなりません。

人々が住み慣れた場所で年を重ね、自立した生活をより長く続けられるよう、私たちは新たなテクノロジーを活用したり、既存の予防システムを拡大したりする必要があります。

■ジュリー・バイルズ氏(国際長寿センター(豪国)理事長)

ヘルシーエイジングは、妊娠前からすでに始まっています。予防には、早すぎることも遅すぎることもないのです。

私たちは生涯にわたって疾病の予防や早期発見、管理を行う必要があるとともに、身体的活動や健康的な食事・ライフスタイルも必要です。

■ガン・キム・ヨン氏(シンガポール保健大臣)

『シルバー』を『ゴールド』へと変えるために、私たちは社会全体でのアプローチをとる必要があります。高齢化社会でより良い予防策を創造する効果的な方法について、私たちはお互いから学ぶ必要があります。

■デヴィッド・シンクレア氏(国際長寿センター(英国)事務局長)

生涯にわたる予防的介入への投資は極めて重要であり、これは人々の健康でプロダクティブな生活を支えるだけでなく、現在および将来にわたる保健システムの持続可能性を支えるためでもあります。

このような介入にはたとえば、的を絞った検診プログラム、予防薬、人々がより健康的なライフスタイルを採り入れる支援、および感染性疾患の予防接種が含まれます。また慢性疾患がある場合、その人のウェルビーイングが向上し、よりアクティブに長い人生を楽しめるような方法で疾病管理を支援する介入も含まれます。

寿命が延びたことにより、長寿の恩恵を受けられるようになりましたが、このチャンスを最大限に活かすためには、政策立案で疾病予防を最優先事項に据える必要があります。」

このイベントは、高齢社会における予防に関する世界的な取り組みの一環として行われました。この取り組みでは、予防をめぐる議論を新たにし、また生涯にわたる予防的介入の推進を目指しています。

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