労働・保健福祉・教育歳出予算を含めた2007年度の歳出案を審議するために、レームダック議会(※1)が再開された。本レポートで何度も述べてきたとおり、この法案は老年学学術業績賞、老年医学教育センター、老年医学研究助成金などで構成される老年医学専門家養成プログラムへの歳出を含んでいる。2007年度の下院の歳出法案では3,150万ドルが回復されたが上院の法案にはこの予算が全く含まれていない。目標は議会によって承認される最終の歳出法案に3,150万ドルが計上されることである。米国議会が人口高齢化に伴う医療介護ニーズに対応する老年医学専門家養成プログラムへの予算を復活することは重要である。
※1:レームダック議会とは
レームダック(足の不自由なアヒル)とは、役立たずの政治家を指す政治用語。米国の議会は上院・下院ともに11月に中間選挙が行われ、当選した議員による新議会が開かれるのは翌年1月。新議会開催までの期間、任期の残っている議会が新たな法案・決議案を審議することは少ないため、このように呼ばれる。
AOAは、「2005年版 米国高齢者の概要」"Profile of Older Americans : 2005"を刊行し、高齢者人口の規模、構成、健康、生活環境、収入など広範囲の統計を明らかにしている。
参照
http://www.aoa.gov/PROF/Statistics/profile/2005/2005profile.pdf![]()
AHRQの保健医療費用と活用プロジェクト(Healthcare Cost and Utilization
Project)が「1997-2004年 高齢者の入院状況」"Trends in Elderly Hospitalizations 1997-2004"を刊行。65歳以上の高齢者は年間入院延べ日数の35%をしめており、入院の原因で最も多いのは心不全、肺炎、冠状動脈硬化症である。高齢化が進むにつれ、入院治療の需要が高まってゆくと述べている。
参照
http://www.hcup-us.ahrq.gov/reports/statbriefs/sb14.pdf![]()
SSAはソーシャル・セキュリティ給付への2007年度の生活費調整(Cost of Living Adjustment: COLA)が3.3%に決定したと発表。この数値の増加は消費者物価指数の変化に基づいたものである。
この結果、約4,900万人のソーシャル・セキュリティ受給者の平均的な受給額は1か月あたり33ドル増えて1,044ドルに達することとなる。一方、ソーシャル・セキュリティ課税の限度額は94,200ドルから97,500ドルになると予測されている。
参照
http://www.ssa.gov/pressoffice/pr/2007cola-pr.htm
「EU25か国の年金政策と貧困高齢者への影響」"Pension Policy in EU25 and its Possible
Impact on Elderly Poverty"を刊行し、EU25か国で近年行われた年金改革について報告。 1995年にはほぼすべての国の公的年金制度の中心は確定給付型年金であったが、2005年までに半数近い国が確定拠出型に移行した。こうした変化は財政や人口動態を考慮して推し進められたのだが、「年金はたまたま導入されるものではなく、高齢者の貧困をなくさなければならないという社会的合意によって生まれたものであることを政策立案者は思い出す必要がある」と警告し、諸々の改定が年金生活者に与える影響について熟慮するよう促している。
参照
http://www.euro.centre.org/detail.php?xml_id=730
欧州委員会は、「EUにおける国家財政の長期的持続性」"Long Term Sustainability of Public Finances in the European Union"を刊行。 高齢化がEU各国の国家財政に及ぼす影響に焦点をあて、高齢社会でかかる支出に備えるべく、加盟各国に対しバランスの取れた予算立案と年金制度改革を達成するよう促している。高齢化という予算上の衝撃を乗り切るためには以下の3つの戦略が必要と述べている。
参照
http://ec.europa.eu/economy_finance/publications/european_economy/
2006/ee0406sustainability_en.htm
PAHOは「保護されない層の医療における格差解消」"Closing Gaps in Health in the Least
Protected Populations"を刊行。 アメリカ大陸全体における保健医療の不公正さに対するPAHOの取り組みについて論じ、寿命の延びとそれに伴う人口高齢化を想定した高齢者に対する保健医療の課題に焦点をあてている。
本報告によると、過去25年間でラテンアメリカとカリブ海諸国の人々の出生時平均寿命は17年延びている。また、キューバやチリなど、各国における高齢者の保健医療の需要に対応する様々な取り組みについて概括している。
参照
http://www.paho.org/Director/AR_2006/english/message.htm
2冊の報告書を刊行。
「世界の社会保障計画2006年欧州編」"Social Security Program Throughout
The World:Europe, 2006"では、欧州44か国の社会保障制度を比較し、次の5つの主な社会保障計画について各国の状況をまとめた。
1)高齢者、障害者、遺族 2)疾病と出産 3)労働災害 4)失業 5)家族手当
本報告は社会保障の課題にとりくみ、個人、世帯、家族のニーズの変化に対応する様々な方法について見直しを行っている研究者や政策立案者に重要な情報を提供している。
http://www.socialsecurity.gov/policy/docs/progdesc/ssptw/
2006-2007/europe/index.html
「国際最新情報」"International Update"の最新号では、エストニア、フランス、スイス、ニュージーランドの公的年金、個人年金の制度に関する最新情報を報告している。また、欧州の高齢化に関する欧州委員会のデータを掲載。
参照
http://www.socialsecurity.gov/policy/docs/progdesc/intl_update/
2006-10/index.html
介護環境における人材不足や離職率の高さなどの問題に取り組むプログラム、"Better Jobs Better Care"は、介護事業者が介護人材をどのようにうまくサポートするかに関して2つの研究報告を発表した。
1つは価値や尊厳に対する介護従事者の認識に影響する文化的な能力の重要性に焦点をあて、もう1つは管理者による指導力と、それが看護助手(certified
nursing assistant :CNA)に与える影響を探っている。
CNAの知識を評価し、彼らが良い仕事をするという信頼を持つなど、管理者がCNAと良好な関係を築くことがCNAの仕事へのより大きな献身につながると述べている。
参照
http://www.bjbc.org/news.asp?pgid=220&NewsAreaID=2
*編集部註:ILC-USは、しばしば「Caregiving Project for Older Americans」の一環として介護に関する報告を行っている。
詳しくはこちらへ
http://www.ilcusa.org/prj/caregiving.htm
"New England Journal of Medicine"10月19日号に掲載された研究によると、アンチエイジング製品として市場に出ているテストステロンもデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)も高齢者に対してどんな効果も認められないことがわかった。本研究はこれらの製品の男性への効果とDHEAの女性に対する効果を測定し、こうしたサプリメントが筋力やインシュリン分泌などに特別な影響を与えることはないことを明らかにした。
参照
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/355/16/1647
AARPは、「高齢化、転居、地域社会:60歳以上の居住者と地域社会のリーダー」を刊行。 本書は、米国の高齢者の転居動向について分析し、60歳以上の人の90%以上は転居するより故郷や地域に留まることを希望していることを明らかにしている。その主な理由は、家族が近くにいること、現在住んでいる場所に満足していること、現在の仕事や就労機会に満足していることである。転居する人の中でも、転居の理由は「家族、友人、子供たちの近くで生活するため」が上位となっている。
参照
http://www.aarp.org/research/whatsnew.html
2冊の報告書を刊行。
「在職期間と401(k)プランの広がり」"Job Tenure and the
Spread of 401(k)s"によると、在職期間は1970年代、80年代は安定していたが、1990年代には下降したとのことである。一般的には、転職の増加によって401(k)企業年金プランの成長が促されたと認識されているが、本書では401(k)プランの広がりによって在職期間が短くなり転職の増加につながったと強く主張している。
参照
http://www.bc.edu/centers/crr/ib_55.shtml
「年齢差別禁止法は高齢者にいかなる影響を及ぼすか」"How Do Age Discrimination Laws Affect
Older Workers?"では、米国における高齢者保護の法律の歴史、仕組み、影響について論じられている。年齢差別禁止法は経営者に高齢労働者の解雇をさせないようにしているが、高齢者、特に新しく仕事を探している高齢者の雇用を差し控える状況を生み出した。年齢による雇用差別にさらに対抗する有効な方法として、雇用の実行を監査すること、雇用差別に対する集団訴訟を公表することなどを提案している。
参照
http://www.bc.edu/centers/crr/wob_5.shtml
「メディケアとHIV/AIDS」を刊行。
メディケアはHIV/AIDS治療に対する国家支出の約4分の1を占め、HIV/AIDSの患者にとって重要な財源となっている。HIV/AIDS患者でメディケアを受給する人の大半は65歳未満であるが、AIDS患者である受給者の3%は65歳以上と推計されている。
参照
http://www.kff.org/hivaids/7171.cfm
「アシスティッド・リビング(※1)での支出に関するメットライフ市場調査」"MetLife Market
Survey of Assisted Living Costs"を刊行。
アシスティッド・リビングの居住者の支出を全国調査し、これらの施設で生活する人の毎月の平均支出は、2,968ドル、年間にすると35,616ドルということを明らかにした。この金額は地域によって異なり、最も低額なのはノースダコタの施設で月額1,742ドル、最も高額なのはニュージャージーの施設で月額5,197ドルである。100万人以上の人が約33,000箇所のアシスティッド・リビングで生活していると推計される。
参照
http://www.maturemarketinstitute.com
※1:アシスティッド・リビング(assisted living facility)とは
米国の介護施設の一つで、ナーシングホームに入居するほどではないが自立して生活することが困難な要介護者に対して身体介護の日常生活補助のサービスを提供している、一般のアパートとナーシングホームとの中間ともいえる施設
「公営住宅と体の弱い高齢者への支援サービス−公営住宅機関とその相談窓口への手引き」"Public
Housing and Supportive Services for the Frail Elderly: A Guide for Housing Authorities
and Their Collaborators"を刊行。
公営住宅に生活する高齢者の増加に注目し、公営住宅機関はいかにすればこのような高齢居住者のニーズにもっと適切に対応し、居住者が住み慣れた場所で老いることを可能にできるかを論じている。公営住宅に生活する約110万世帯中、31%が高齢者世帯だが、このうち、かなりの数の施設が建築物としても、機能的にも時代遅れのものになっている。様々な施設が行っている医療サービスの付加など、高齢居住者に役立つ革新的な方法を提示し、そうした工夫によって、公営住宅の居住者が可能な限りそこで長く生活できるようになり、介護に対するメディケイド財源の需要も削減できるとしている。
参照
http://www.milbank.org/