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ホーム > 海外情報(Policy Reportトップ) > 2006 ILC Policy Report 1月号
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■米国議会:老年医学プログラムに対する予算を削除!

米国議会は労働省および保健福祉省の2006年度歳出予算案において、驚くべきことであるが、老年医学教育・研修への予算を削除した。2005年度には3,150万ドルであった老年医学プログラムへの予算が2006年度は「ゼロ」になるというのである。これは、全米の40を超える老年医学教育センターや、老年医学研究奨学金のもとで研修を現在受けている多数の老年医学研究者、そして老年医学共同プログラムのもとで他の保健分野の研修を受けている多数の研究者、学生に、衝撃的な影響を与えるだろう。
“高齢化に関するホワイトハウス会議” The White House Conference on Agingに出席した代表者らが、「保健分野に関するすべての専門家、助手、学生、現場の介護職員、を対象とする老年医学教育・研修を支援する」”Support Geriatrics Education and Training for All Healthcare Professionals, Paraprofessionals, Health Profession Students, and Direct Care Workers” という決議に賛成したにもかかわらず、この全く理解し難い動きがもたらされたのである。事実、この決議は全73議案の中で6番目に多い賛成投票数を獲得したのである。
高齢者数の増加を考えると、老年医学分野の医師やプロの介護者を養成するための予算の削除は、どう考えても短絡的である。実際問題として、このような(連邦予算の全体からみると)極めて小額な予算を削除することにより、現在および将来を通して米国における高齢者の健康維持管理は、直接好ましくない影響を受けるだろう。米国議会がメディケア・パートDの処方薬費給付のために10年間に7,000億ドル以上を割り当てると表明したことを考えると、この削除はいささか道理に合わない。高齢の家族や友人を持つ人や、「自分自身が」将来、いつか高齢となる予定の人は、自分の州の上院・下院議員とコンタクトをとり、老年医学専門プログラムのための予算を復活させるよう強く要求することが重要である。
参照
http://www.ilcusa.org/news/story_geri.htm

国際ニュース
■国立疾病防疫センター Center for Disease Control and Prevention (CDC):米国民の健康状況についての統計を発表

CDCの全米医療統計センター National Center for Health Statisticsは、年次報告書「米国における健康 2005年」“Health, United States 2005”を刊行し、米国民の健康に関して広範囲にわたる統計結果を発表した。寿命が2002年の77.3歳から2003年には77.6歳へとやや延びたことを明らかにしている。しかし、55〜64歳の米国民の約半数が高血圧、5人に2人が肥満であり、こうした状況は健康長寿の増進を脅かすだろうと述べている。本書は、55〜64歳の年齢層について、今後10年間に成人人口の中で最も数が急増する層として特に注目している。
参照
http://www.cdc.gov/nchs/hus.htm

■米国議会予算局 Congressional Budget Office (CBO):高齢化による経済動向を検証

CBOは、「21世紀の世界的な人口高齢化とその経済的影響」“Global Population Aging in the 21 Century and Its Economic Implications”を刊行。先進国、発展途上国双方の人口統計的な動向について論じているが、この動向は、世界の地域によって時期も歩調も異なるとしている。例えば、先進国ではすでに人口転換がかなり進行した段階に達しており、出生率は低く、寿命が延びているため、高齢人口が増加し、人口増加率は低下している。その一方、発展途上国の多くは概ね比較的高い出生率と人口増加率を維持している。
こうした動向は資本と労働の国際的な流れに影響を与えるだろう。さらに本書は、発展途上地域は先進国への移民の供給源であり続けるだろうが、先進国が急激な高齢化の時期に入り、一方途上国で就労人口が急増した後には(今まで先進国から発展途上国に流れる傾向にあった)資本(Capital)の流れが逆転する可能性があると専門家の多くが確信している、と述べている。
参照
http://www.cbo.gov/ftpdocs/69xx/doc6952/12-12-Global.pdf

■環境保護庁 Environmental Protection Agency (EPA):高齢者向け飲料水情報を提供

EPAは、高齢化構想“aging initiative”の一環として、「水について−高齢者と家族介護者への情報」“Water Works: Information for Older Adults and Family Caregivers”と題する概況報告書を刊行。高齢者は水質汚染の影響を特に受けやすいとして、水中に存在する、細菌、鉛、ヒ素、ラドンなどの汚染物質が健康に及ぼす影響について説明するとともに、自分が今飲んでいる水についての詳細情報をどこで得られるかを記している。
参照
http://www.epa.gov/aging/resources/factsheets.htm#waterworks

■食品・医薬品局Food and Drug Administration (FDA):高齢者向け健康製品を紹介

FDAはホームページで、「成人の健康問題」“Maturity Health Matters”と題する広報を開始。高齢者に向けて、長寿と実りある生活に役立つFDA管理下の製品を取り上げる。第1号では、心臓病と糖尿病に焦点を当て、診断や治療のための医療機器について検証している。
参照
http://www.fda.gov/cdrh/maturityhealthmatters/issue1.pdf

■住宅・都市開発省 Housing and Urban Development (HUD):高齢世帯増加への提言

HUDは報告書「高齢者の住宅消費−過去の動向と予測される動向」“Elderly Housing Consumption: Historical Patterns and Projected Trends” で、世帯主が85歳以上の高齢者世帯数は2005年には2,900万世帯であったが、2030年までには5,400万世帯へと、約88%の増加が予想されることに注目している。この激増によって、高齢者世帯のための社会的サービスの必要が高まり、支援ネットワークが拡大すると予測され、それに応じた計画が必要だと述べている。さらに、住宅の供給や入手の問題では、市場がこうした状況の変化に応じて相当数の多様なタイプの住宅を提供できるよう、十分な配慮が必要だとしている。
参照
http://www.huduser.org/datasets/ahs/Elderly_Housing_Consumption.pdf

国際ニュース
■カナダ:人口統計を刊行−著しい人口高齢化を予想

カナダ統計局 Statistics Canada は、近い将来の著しい人口高齢化に焦点をあてた最新の人口推計を刊行。これによると、65歳以上の高齢者数は、2015年までに15歳未満の子どもの数を初めて上回り、その後も増加を続け、2031年までに子どもの数4,800〜6,600万人に対し高齢者数が8,900〜9,400万人と、高齢者数が子どもの数のほぼ2倍に達すると予想されている。また2005年には13%であった高齢化率は、23〜25%に上昇すると予想されている。
参照
http://www.statcan.ca/Daily/English/051215/d051215b.htm

■日本:医療保険改正法案を発表、国会での審議へ

厚生労働省は医療保険改正法案を発表し、本案は国会で審議される。本法案は、医療制度の経費削減や介護の質の改善等を目指す様々な方策を提案しているが、特に次の2点は高齢者に直接影響が及ぶと考えられる。1)75歳以上の高齢者を対象とする医療保険制度の新設、2)高齢者の自己負担額についての規定改正、である。
厚生労働省は、現行の3つの医療保険制度-1)国民健康保険、2)政府管掌健康保険、3)健康保険組合-に加えて、2008年には、75歳以上を対象に別個の保険制度を確立するよう提言している。これは、高齢者医療制度の運営の透明性と信頼性を高めるものであると期待している。
現行の国民健康保険制度では、70歳以上の高齢者は、世帯の年間所得が620万円以上の場合は医療費の2割、620万未満の場合は1割を自己負担している。70歳未満では、一律3割自己負担である。厚生労働省の改正原案では、1)年間所得が620万円以上の70歳以上の高齢者は3割を負担、2)620万円未満の場合は、65〜74歳の高齢者は2割、75歳以上の高齢者は1割を負担、また低所得高齢者に対しては、所得レベルに応じて1割あるいはそれ以下と規定している。これによって、国の保険医療費の総額を大幅に節減できるものと期待している。さらに十分な審議を重ね、2006年中には最終的な改正案を作成する予定である。
参照
http://www.mhlw.go.jp/

■マーサー人材コンサルティングMercer Human Resource Consulting:多国籍企業の年金制度報告

Mercer社は、「国外居住者と第三国国民調査」“Expatriate and Third-Country Nationals Survey”を刊行。これは多国籍企業200社以上の雇用状態と就業手当の実態について要約したものである。ビジネスの成功には世界規模での競争がますます重要となっており、多国籍企業の多くは国際的業務の部門を維持あるいは強化していると述べている。本書によると、海外に派遣されるビジネスマンに向け、国際的な年金制度をもつ企業の3分の2は、確定拠出型制度(※1)を提供している。10年前は、これら企業4分の3が確定拠出型制度を提供していた。
参照
http://www.mercerhr.com/expatsurvey

※1:確定拠出型制度とは
掛け金が予め決められており、加入者が自分の判断で資産運用を行う年金制度。将来受け取る金額は、資産運用の結果等によって異なる。

■社会保障庁 Social Security Administration (SSA):諸外国の年金最新動向を報告

SSAは、“International Update”の最新号を刊行し、外国の公的・民間年金について最近の進展を述べている。本号には、イタリア、スウェーデン、英国、ガーナ、メキシコからのニュースのほか、「アフリカにおける高齢化と貧困および公的年金の役割」“Ageing and Poverty in Africa and the Role of Social Pensions” と題する国連の報告書も含まれている。
参照
http://www.ssa.gov/policy/

ILCトピックス:高齢化に関する研究
■アルツハイマー病:認知症患者の増加−発展途上国での顕著な増加を懸念

国際アルツハイマー病協会Alzheimer’s Disease Internationalへ報告された研究によると、2001年に60歳以上の認知症患者数は全世界で2,430万人だったが、年々460万人ずつ増加し、2040年までに8,110万人に達すると推定されている。
また、認知症患者の大多数が発展途上国で暮している点に注目し、その割合も2001年では60%だが、2040年までには71%に上がると推測している。さらに発展途上国での増加率は、先進国の3〜4倍高いと推測している。2040年までには、中国の認知症患者数は、先進国全体の総計と同数になると見込まれている。報告では、改善に向けた環境が必要だが、まず政策立案者、医師、市民の基本的な意識の欠如を改善することから始めなければならないと結んでいる。
参照
http://www.alz.co.uk/media/nr051216.html

■緩和ケア:緩和医療プログラムの急増

緩和医療ジャーナルJournal of Palliative Medicine12月12日号の一研究によると、米国の病院では緩和医療プログラムが急速に増加し、2000年は632件(全米病院の約15%にプログラムあり)だったが、2003年には1,027件(全米病院の約25%)となった。これらのプログラムは、慢性病患者および重篤患者の治療の重要な要素と考えられ、ヘルスケアの質と費用双方の改善に関係している。また、これらのプログラムは、とりわけ米国北東部、太平洋岸、山岳地域でより多くみられると述べている。
参照
http://www.capc.org/news-and-events/releases/12-12-05-press-release.doc

NPOだより
■全米退職者協会 American Association of Retired Persons (AARP):熟練就労者の確保−ビジネス的に重要

AARPは、「50歳以上の就労者に対するビジネス的配慮―現在の競争社会における、将来必要となる才能に関しての計画」“The Business Care for Workers Age 50+: Planning for Tomorrow’s Talent Needs in Today’s Competitive Environment”を刊行。これは、国際的企業Towers Perrin社によって作成され、ビジネス的な視点から50歳以上の就労者の求人と確保について考察している。雇用主はより広い視野でコストを考えるべきだと強調し、50歳以上の就労者は堅実で信頼できる投資対象であるとしている。事実、熟年の経験豊かな就労者を引き付け、確保することは、新たな労働市場でますます重要になるだろうと述べている。
参照
http://www.aarp.org/research/work/employment/workers_fifty_plus.html

■ボストン大学定年研究センター Center for Retirement Research at Boston College

2冊の新刊書を刊行。
「死亡率予測―専門家フォーラムによる重要な調査結果」“Projecting Mortality: Key Findings From A Forum of Experts”は、死亡率の改善およびこれによるソーシャル・セキュリティ(※2)の財政状況への影響について専門家委員会の討論をまとめたものである。結論は次の3つ。1)死亡率推定のために年齢別死亡率を用いる場合、社会保障庁(SSA)の予測と外部の人口統計学者の予測との差異は比較的少ない。2)諸予測によるソーシャル・セキュリティへの財政的影響についての結論は、75年という期間で見ると余り差異はない。しかし、より長期的にみると、予測の差異はより重要となる。3)死亡率変動というリスクを制度から取り除くため、ソーシャル・セキュリティの給付は寿命に連動して支給されるということも可能であろう。
「定年期の住居および生活水準」“The House and Living Standards in Retirement”は、住宅の資産価値が退職者の所得代替率(※3)にどのように影響しているかを論じている。本書は、住宅は主要な資産であり、住宅資産を退職者の所得代替率に組み込む方法を提示している。これは所得代替率について書かれたシリーズ3冊目である。最終的な結論として、全体の3分の2の世帯は年金受給があり、概してゆとりがあるが、3分の1の世帯は年金受給がなく、住宅資産を考慮しても生活は苦しいと述べている。さらに、ベビーブーム世代の定年の到来につれて状況が変わりつつあり、その結果、ベビーブーム世代へのソーシャル・セキュリティの所得代替率はどんどん低くなり、企業年金からの収入も減るであろうと警告している。
参照
http://www.bc.edu/centers/crr/

※2:ソーシャル・セキュリティとは
米国民および米国で合法的に就労する外国人に対する社会保障制度で、日本でいう公的年金の役割を担う。就労期間中に税金を支払うことにより、定年や傷害、死亡等の際には、月々の手当が就労者本人、又はそれぞれの家族に支給される。

※3:所得代替率とは
年金給付額が現役世代の所得に対してどの位の割合かを示す数値。

■国際長寿センター(米国) ILC-USA

2冊の新刊書を刊行。(1冊は近日刊行)
近日刊行される「米国の年齢差別」“Ageism in America”に先立ち、年齢差別についての報告を発表し、米国において年齢差別が顕著にみられる分野に焦点をあてている。報告には、社会における高齢者の待遇についての実態や統計が含まれるほか、高齢者虐待、職場での差別、ヘルスケアの差別、ナーシングホームでの差別、そしてメディア、高齢者へのマーケティング、病院の救急センターでの対応における差別にも注目している。
「世代間連携―美術と人文科学における高齢者ボランティア」“Intergenerational Connections: Older Volunteers in the Arts and Humanities”では、高齢者ボランティアを雇い、若者と交流する美術・人文科学プログラムについて考察。こうした世代を越えたプログラムにより、異世代間で知識を共有し、関係を築く建設的な土台がつくられると考えている。また、将来に向け、世代間交流プログラム展開の土台となる最も優れた実践例を概説している。個人ではなく地域に焦点を当てること、目的意識を失わないこと、連帯、共働、連携による広範な支援を確立すること、使命を明確にし、チャンスを生かしてこうした体験に取り組むこと、等を勧めている。
参照
http://www.ilcusa.org/media/default.htm

■カイザーファミリー財団 Kaiser Family Foundation:メディケア処方薬費開始の影響分析

「メディケア処方薬費の適用開始に伴う退職者用健康保険補助の展望」“Prospects for Retiree Health Benefits as Medicare Drug Coverage Begins”を刊行。新しいメディケア・パートDの処方薬費給付に、大企業がどう対応しているかを調査したものである。
退職者用健康保険補助を現在提供している企業の約8割は、少なくとも2006年度のメディケアまでは、退職者に処方薬費適用を継続する(その一方で、そのための助成金を集める)ことが分かった。しかし、2010年までを考えると、この適用を維持できるだろうと回答した企業は半数にとどまった。また、多くの企業はプランに加入している退職者に影響するような方針をもっており、特に、そのうち6割の企業は、メディケア・パートDに加入している退職者は企業による処方薬費の保障だけでなくその他の医療保障をも失うことになるかもしれないと回答している。
参照
http://www.kff.org/medicare/med120705nr.cfm

■ピュー研究センター Pew Research Center:ベビーブーム世代の家族としての責任

「ベビーブーム世代、60歳へ―アクエリアスの時代(※4)から責任の時代へ」“Baby Boomers Approach 60: From the Age of Aquarius to the Age of Responsibility”を刊行。多くのベビーブーム世代は、自分自身の将来の退職に目を向けている一方で、育児、(成人の)子どもや高齢の親の世話など家族の一員としての様々な責任とのバランスも考えていることが分かった。50%は1人以上の子どもを育て、また(もしくは、あるいは)1人以上の成人の子どもの主たる金銭的支援者となっており、20%は両親に何らかの金銭的支援をしている。多くのベビーブーム世代の両親は健在であり、71%は少なくとも両親のどちらかが健在であるという点が注目されている。半数の回答者は、ソーシャル・セキュリティではなく、401k(確定拠出年金)またはその他の民間退職貯蓄プランが退職後の最大の所得源となるだろうと述べている。
参照
http://pewresearch.org/socialtrends/

※4:アクエリアスの時代とは
1960年代後半に大ヒットしたミュージカル「Hair」の曲「Aquarius」の歌詞である「Age of Aquarius」を引用している。「Hair」は当時の社会情勢を反映したミュージカルで、反体制のシンボル的な役割を果たした。

■都市研究所 Urban Institute:高齢の米国民の経済保障構想を報告

高齢の米国民の経済保障構想 の一環として報告書を2冊刊行。
「物価連動算定方式によるソーシャル・セキュリティ改革」 “Reforming Social Security Through Price and Progressive Indexing”では、ソーシャル・セキュリティ給付を、賃金の上昇ではなく物価の上昇と連動させようとする提案と、給付額については、高所得者には物価の上昇と、低所得者には賃金の上昇と連動させようとする提案について分析。「女性とソーシャル・セキュリティ」“Women and Social Security”では、女性にとっていろいろと問題のあるソーシャル・セキュリティの側面を取り上げ、女性に対してより公正な給付配分を求める提案について考察している。
参照
http://www.urban.org/toolkit/policybriefs/subjectbriefs.cfm?
documenttypeid=408%0D

監修:大迫政子(ILC-USAプロジェクト諮問委員)

 
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