ILCは、高齢者の睡眠問題についてのギャラップ調査(※1)の結果を発表した。それによると、およそ半数(46%)の高齢者の睡眠時間は7時間以下であり、25%は「睡眠に関する問題」を抱えていると回答。80%は健康上睡眠が重要であると自覚しているが、不眠経験者の多くは治療を受けていない。睡眠の問題について介護提供者に相談したことのある回答者の中で治療を受けていない人の割合は53%にのぼる。しかし、健康的なライフスタイルに重要な要素として、十分な栄養、頭脳の鋭敏さ、規則的な運動、に続いて快眠が第4位にあげられていることから、健康には睡眠が重要であるという点は強く認識されているといえる。
また、高齢者の40%が安眠を妨げる原因として「心配すること」をあげた。これは介護者も同様の傾向があり、介護者の50%は「心配すること」のために眠れなかった経験があると回答している。その他の調査結果として、就寝後夜中にトイレに起きる高齢者は43%であった。また、毎日充分な睡眠をとっているとする回答者は男性が38%で女性の27%を上回っている。極めて健康であると回答した高齢者の46%は、毎日熟睡していると回答している。
参照
http://www.ilcusa.org/media/default.htm
※1:ギャラップ調査とは
1935年に米国の世論分析家ギャラップ(George Gallup/1901〜1984)によって設立された米国世論調査所Gallup Organization社が行う世論調査
CDCの全米医療統計センター National Center for Health Statisticsは、介護を受けている高齢者が日常生活動作(ADL)の支援として求めている事項について最新情報を発表した。それによると、介護者と同居している場合でも、男性に比べて女性の方が、入浴、食事、トイレなど身の回りの介護支援を(プロのサービス業者などから)受けている割合が高い。これは、高齢女性は、家族からの介護が充分ではなく、その結果として、身内以外の介護提供者による支援を必要としていることを示唆するものである。
参照
http://www.cdc.gov/nchs/products/pubs/pubd/hestats/
homhltpatients.htm
日本では、高齢者虐待防止法が国会を通過。この新法では、身体的虐待、介護放棄、心理的外傷を与える言動、性的虐待、財産の不当処分を、「虐待」と定義している。施設入所および在宅の高齢者に適用され、虐待の事実に気付いた者は地域の担当者に連絡することが求められ、担当者は各ケースについて調査することが義務付けられている。これにより高齢者の権利擁護を目指す。
さらに本法は、過労の介護者は虐待者になりがちである等のリスクを認識し、緊急時には高齢者がこうした介護者(多くは要介護者の子どもや親族)から離れて短期滞在できる施設を準備するよう全市町村に命じている。本法は2006年4月1日に施行される見込みである。
参照
http://www.mhlw.go.jp/
オーストラリア住居・都市研究所(The Australian Housing and Urban Research Institute)は、「住みなれた場所で老いる:高齢期における世代間・家族間の住居の相続と移転」“Ageing
in Place: intergenerational and intrafamilial housing transfers and shifts in
later life”を刊行。これは、オーストラリアの高齢者が住居に対して持つ将来の心がまえに焦点を当てた報告書である。高齢者の価値観や優先順位には大きな変化がみられ、自立、柔軟性、消費、ライフスタイルの選択への願望が優先され、「高齢者」や「家族の義務」など伝統的概念に異議を唱え始めている。
また、高齢者の子どもに対する態度が自己犠牲から自分中心へと変化し始めているが、これは定年後のライフスタイルへの期待や、高齢者は自身の老後のためにお金を使うべきだという認識が高まったからだと論じている。また、全体の4分の1を超える回答者、ベビーブーム世代の3分の1以上では、生きている間に全財産を使いきるつもりでいるという結果がでている。1人暮らしの高齢者も増加し、75歳以上で1人暮らしをしているのは、回答者の57%にのぼった。
参照
http://www.ahuri.edu.au/global/docs/doc920.pdf
公的年金の国庫負担を軽減するため、早期退職制度において年金を取得する権利が生じる退職年齢を58歳から60歳に引き上げるという政府案に対し、大規模な全国的ストライキが2度行われた。政府と企業団体は、この改正は人口高齢化に対応するために必須であるとして支持しているが、労働組合はこの政策は既に失業率が高まっている若年層の就労を一層難しくするものであると考えている。政府はこの改正を実施する意向であり、ストライキがさらに発生することが予想される。
英国のシンクタンク Tomorrow’s Company は、報告書「人口の高齢化、年金、富の創造」“The Aging Population,
Pensions and Wealth Creation”を刊行、英国には年金危機はなく、年をとることに対して社会にはゆとりがあり、「社会全体の生産性の向上が見込まれるので、就労しない高齢者の増加による潜在的な悪影響は少ないだろう。」と論じている。
また、多くの誤った仮説に対し異議を唱えているが、一例として、65歳以上の数と生産年齢人口(15〜64歳)の数の比較によって適正な年金の給付に必要な財源を見積もるより、就労者数と非就労者数を比較する方がはるかに意義があるとしている。この総合的な「経済支援比率」(economic
support ratio) を用いると、1961年と比べて2041年でも著しい変化はないだろうということが明らかにされた。さらに本書は、過剰な預金は年金財源に不可欠な経済の成長を鈍らせるので、預金が増えれば万能であるとは必ずしもいえないと述べている。
参照
http://www.tomorrowscompany.com/news.htm#news0
OECDは、加盟21ヶ国の高齢労働者の雇用促進を目指す政策をまとめた報告書を刊行。年金および定年の制度改正への関心が高まっているが、OECDも、福祉制度、企業の雇用・解雇についての手続き、高齢求職者向けサービス、労働条件、賃金と研修実践など広範にわたる政策改革が必要だと述べている。OECDによると、公および民の環境は依然として高齢者が仕事を続けにくい状況である。OECD諸国の平均では、25〜49歳で仕事に就いている者は75%であるが、50〜64歳では60%以下である。就労形態に変化がなければ、今後数十年の間に、仕事をもたない高齢者が増え続け、その割合は、2000年には38%であったが、2050年には70%とほぼ倍増するだろう。その結果、経済成長の鈍化とともに、増税あるいは年金などの給付金減額へとつながる。こうした状況を回避するために、OECDは次のような活動を推奨している。1)政府は、年金その他の福祉制度が高齢での就労を妨げるのではなく、奨励するためのものであることを保障すべきである。2)事業主は、雇用差別をなくし、幅広い年齢層の労働力を職場で活用すべきである。3)高齢者自身が、より長く就労し、新しい技術を習得しようとする姿勢を持つことも重要である。
参照
http://www.oecd.org/olderworkersforum
国連経済社会局人口部は、「世界における高齢者の生活環境」“Living Arrangements of Older Persons
Around the World”を刊行。これは、世界130余国の高齢者の生活環境の動向を調査・分析した、初の世界的な調査である。また本書は、60歳以上の高齢者の生活環境に関連する人口統計、社会、経済的要因を分析し、高齢者について、家族との同居、一人暮らし、施設入所に焦点をあてている。その結果として、高齢者7人中1人に相当する約9000万人は一人暮らしであり、その大多数は女性であり、その理由として男性よりも未婚者が多いということを明らかにした。
また、多くの先進国で、高齢者は子どもと離れて暮らしているが、発展途上国では子どもと同居する例が多く、HIV感染率が高い国の多くでは、子どもではなく孫と同居する高齢者世帯の比率が増加していることも明らかにした。「政府の政策として、高齢者の自助努力を高め、ニーズに応じたサービスを提供し、家族が介護や福利に継続的に関わるための支援策が必要である。」と報告書は結んでいる。
参照
http://www.un.org/esa/population/publications/livingarrangement/
report.htm
米国の社会保障庁は、“International Update”の最新号を刊行。マケドニア、ポルトガル、フィジー、マラウイ各国の公的および民間の年金について最近の動向を紹介すると共に、世界銀行、OECD、ING(オランダの銀行)の三者間で行われている新たな共同研究について論じ、世界のさまざまな積立方式年金の仕組みについて、成果と効率性の評価を行っている。
参照
http://www.ssa.gov/policy/docs/progdesc/intl_update/2005-10/2005-10.html
老年医学研究プログラム理事連合 Association of Directors of Geriatric Academic Programs
(ADGAP)は、老年医学や老年精神医学プログラムの動向を調査した「研修と実践 最新情報」 “Training and Practice Update”
を新たに刊行した。本書によると、老年医学研究奨学金助成プログラムの数は、2004〜05年度は131で2001〜02年度から11増加し、1年目の特別研究員の定員枠も19%増の444人になったが、このうち利用されたのは定員の67%であった。老年精神医学プログラムの数は、2004-05年度は60で2001〜02年度から2減少したが、1年目の特別研究員の定員枠は3人増加の135人となった。同分野の2年目の特別研究員の数は減少し、その理由の一つとして、2年目の研究に必要な資金が不足していることを報告は指摘している。
さらに老年医学や老年精神医学の研修をうけている医学生が充分にいるということは、医学校における老年医学担当の教員の充分な配置、老年医学以外が専門の医師に対し高齢者への適切なケアに関して教育啓蒙する人材が確保されるという観点から大切であると結論している。
参照
http://www.americangeriatrics.org/adgap/
ADGAP_Longitudinal_Study_Update.pdf
British Medical Journal が10月21日オンライン版で発表した研究によると、早期退職は長寿につながるわけではないことが判明した。調査の対象は、55歳、60歳、65歳で退職したテキサス州の3,000人余りの高齢者。55歳で退職した人は、60歳、65歳で退職した人に比べて死亡率が高く、60歳と65歳退職者の間には大きな差異はなかった。
研究者は「健康を害したため55歳で退職した者がいたと推測するのが妥当であろう。この世代の退職後10年以内の死亡率が、継続して働いている同世代の約2倍であったからだ。しかし60歳で退職した人々の健康状態は、60歳以後も継続して働いている人々と差がない。」と述べている。また本研究によると、職業の種類による社会経済的レベルの高い低いに関係なく、退職年齢が高くなるほど死亡率が下がる傾向があるとされている。
参照
http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/abstract/331/7523/995
2冊の報告書を刊行。
「高齢労働者の役割に関する再考察 -ヨーロッパおよび日本における高齢労働者の雇用促進- 」
“Rethinking the Role of Older Workers: Promoting Older Worker Employment in Europe
and Japan”は、人口の高齢化と年金コストの上昇に対するEUと日本の対応を考察すると共に、高齢労働者の雇用促進に向けた各国の目標と指導力を分析したものである。日本では、年金適用年齢を引き上げ、助成金を事業主に交付して高齢者の就労とその維持を促進している。
EUでは、早期退職奨励金の廃止、就労・退職に対する柔軟な選択肢の提供、年齢による差別の禁止、潜在的な労働力不足についての事業主への啓発、といった対策が行われている。また、この問題は米国では日本やヨーロッパほど高い関心を集めていないことについても言及している。
参照
http://www.aarp.org/research/work/employment/ib77_workers.html
「私たちの旅立ち―介護の質、経済発展、および介護労働者の国を超えた移住―」“We Shall Travel On:
Quality of Care, Economic Development, and the International Migration of Long-Term
Care Workers”は、発展途上国から先進国へと国を超えて移住する介護労働者を増加させる要因となっている、人口統計的、社会的、政治的事象を検証したものである。
報告書では、日本、ノルウェー、イタリア、オーストリア、英国、米国などの先進国における、外国からの介護労働者の流入についての現状も報告されている。外国からの労働者の受け入れに積極的な国もあることから、こうした流出により発展途上国では技術的・経済的損失が生じているなどの問題についても論じている。
参照
http://www.aarp.org/research/longtermcare/quality/
2005_14_intl_ltc.html
2冊の報告書を刊行。
「なぜ女性は年金給付を早期に請求するのか?」“Why Do Women Claim Social Security Benefits So Early?”では、(62歳から早期受給が可能であるが)65歳まで待って満額の年金を受給する方が有利であるのに、女性の多くは男性に比べると、受給資格を持つと直ちに請求する傾向があると指摘。年金の請求の際、高齢女性に向けられる誘因を集約し、未婚女性と既婚女性では直面する選択が大きく異なることにも言及している。事実、社会保障給付の仕組みは、大多数の既婚女性に対して出来るだけ早く年金を受け取ると有利であるようにできている。
参照
http://www.bc.edu/centers/crr/ib_35.shtml
「労働者はどのくらい貯蓄しているのか?」“How Much Are Workers Saving?”では、米国商務省のNational Income and Product Accounts(NIPA) による貯蓄率(米国で一般的に報告される貯蓄率で、2004年は1.8%)には生産年齢人口の貯蓄と退職者の負の貯蓄(※2)の両者がどの程度含まれているかという新たな問題に焦点をあてている。本書は、生産年齢人口(15〜64歳が該当)による経常利益からの貯蓄と、65歳以上の退職者によってなされる貯蓄とを区別する必要があると論じている。
参照
http://www.bc.edu/centers/crr/ib_34.shtml
※2:負の貯蓄(dissaving)とは所得よりも消費が大きい状況であり、不足分は資産の取り崩しによってまかなわれている
FPAは、Aetna社 と Women’s Policy Inc. との共同発表で、米国人は定年後のヘルスケアに必要な費用を低く見積もっているという調査結果を発表。調査によると、米国人の定年設計は財政面ばかりに集中し、健康面にはほとんど時間をさいていない。回答者の52%は、社会保障の自己負担額と保健関連費用を月300ドル以下に抑えるつもりでいるが、実際には平均的な退職者は月あたり約640ドルを使っていると指摘している。
参照
http://www.fpanet.org/member/press/releases/102005_pfyh.cfm
以下の2冊の新刊書を刊行。
「メディケアの財政健全化への新たな措置についての政策的含意」“The Policy Implications of Medicare’s
New Measures of Financial Health” は、「メディケア医療改革法(医療処方薬、改善および近代化に関する法律)」Medicare’s Prescription
Drug, Improvement and Modernization Act of 2003(MMA) に基づいて制定されたメディケアの財政健全化に関する新たな措置を検証したものである。この新しい措置は、一般財源をメディケア総費用の一部を負担するものとし、一般財源がメディケアの総費用の45%以上を占める場合は「過剰」とみなされる、と規定している。本書は、このようなケースを「過剰」と規定することによって、メディケアに対し一般般財源が負担する上限額を定めた政策決定を、暗に支持していると指摘している。さらに、メディケアの唯一の主要財源が一般財源である点(事業主・現役世代らが負担する社会保障税や受給者が毎月負担する保険料は主要財源にはなっていないこと)にも焦点をあて、これだけでは、財政的負担や、長期に渡って義務を果たすことについて充分に対応できないとしている。
参照
http://www.kff.org/medicare/7414.cfm
「メディケア処方薬給付への加入が保険料に与える影響」“The Impact of Enrollment in the
Medicare Prescription Drug Benefit on Premiums” は、もし2006年に、加入者数が米議会予算局 Congressional Budget Office (CBO)が想定した2900万人に達しない場合、そしてもし加入者の処方薬の総費用が相対的に高い場合、月々の処方薬保険料にどのような影響があるかを推測。本書は、利用額が高い受給者と低い受給者の加入比率から予想される様々なシナリオについて概説しているが、ある特定の状況では2007年の保険料の平均値は著しく上昇することもありうると指摘している。
参照
http://www.kff.org/medicare/7423.cfm
「アシスティッド・リビング(※3)の費用に関するメットライフ市場調査」“The MetLife Market Survey of Assisted Living Cost”を刊行。アシスティッド・リビングに入居している1人あたりの月額基本料金の個人負担分は、2005年は全米平均で月額 2,905ドル、年額では34,860ドルであった。この料金は部屋代と食費と定められているが、一般的には少なくとも2回の食事、清掃、介護支援料金が含まれる。アシスティッド・リビングの料金は地域による格差が大きく、ミシシッピ州ジャクソン地域が月額1,642ドルで最も低く、マサチューセッツ州ボストンは 4,629ドルで最も高い。
参照
http://www.metlife.com/WPSAssets/
84989326101130770986V1F2005%20Assisted%20Living%20Survey.pdf
※3:アシスティッド・リビング(Assisted Living Facility)とは
米国の介護施設の一つで、ナーシングホームに入居するほどではないが自立して生活することが困難な要介護者に対して身体介護の日常生活補助のサービスを提供している、一般のアパートとナーシングホームとの中間ともいえる施設
2つの冊子、「自宅に住み続けるために自宅を活用―高齢者のための計画ガイド」“Use Your Home to Stay At Home:
A planning Guide for Older Consumers” および「自宅に住み続けるために自宅を活用―今支援が必要な持ち家所有者のためのガイド」“Use
Your Home to Stay at Home: A Guide for Homeowners Who Need Help Now” を刊行。持ち家を担保にして融資をうけ、介護費用、在宅サービスその他の必需品の対価を支払い、高齢者が自宅に住み続けられるようにする場合に、いくつかの選択肢があることを消費者に解説。リバース・モーゲージ(※4)に焦点をあて、家を所有する高齢者とその家族が定年後の計画の一環としてリバース・モーゲージを有効に活用できるよう支援することを目指す。
参照
http://www.ncoa.org/content.cfm?sectionID=250
※4:リバース・モーゲージとは不動産(=持ち家)を担保として、毎月一定額の融資を受け、契約期間終了時に担保不動産を処分して、融資金を一括返済するという制度
「将来の高齢者保健医療ケア支出―メディケアに対する影響」“Future Health and Medical Care Spending of the Elderly: Implications for Medicare”についての研究の主要部分を発表。この取り組みは、「将来の高齢者モデル」Future Elderly Model(FEM)といわれる人口統計と経済の視点から高齢者の将来的コストと健康状態を予測するモデル、による分析の結果をもとにしている。
医療の進歩によって健康増進や長寿は実現されるが、これはメディケアの支出削減にはつながらず、反対に増加の見込みであると分析。研究者によるとある一つの病気を根絶することは大きな経費節減にはならないが、肥満症は例外である、とされている。例えば、肥満と普通体型の70歳の人の間には寿命の差はないが、肥満の人は障害を持つ傾向があり、重度の障害は高い介護支出につながるとしている。
参照
http://www.rand.org/publications/RB/RB9146-1
監修:大迫政子(ILC-USAプロジェクト諮問委員)